
施工計画から管理までを一任され、いわゆる初の現場リーダーを経験した入社4年目。それは川幅が500mはある首都圏の橋梁下部工工事でした。橋を架けるため河川内に橋脚を構築する工事を、11月~5月の渇水期間内にやり遂げなければなりません。
それまで上司の下で動いていた自分から意識は一転。「責任者として必ず成功させる」という想いが高まりました。進捗や施工手順の確認に必死になり、とにかく頭の中は常に仕事でいっぱい。しかしそれは、これまでに感じたことがない仕事の楽しさ・面白さに直面する毎日でした。
現場の作業員さんとの関係も良好で、ゴールに向かって共に歩む充実感を満喫。当時独身だったこともあり、まさに寝食を忘れての仕事でした。なんと、気づいたら10Kgも自然減量!身体は細くなりましたが、スキル面では大きく成長した7ヵ月間でした。


初配属は首都高速道路を作る仕事。当時は「先輩の仕事・現場を見て学べ」という雰囲気が色濃く、知識・技術のなさをやる気でカバーする日々でした。平面図と3Dに現場が出来上がっていくリアルな様子とを見比べ図面の読み方を学んでいくなど、座学ではなく現場の中で自然と成長していく努力を重ねていた気がします。
「仕事ができない自分をなんとかしたい」。この1年目の悔しい想いは、今も仕事をする上でのバネになっています。高校から野球を始め、大学時代から今も続けている草野球。チームプレーで勝ちにいく楽しさは仕事に共通しています。上司や作業員さんに教えてもらう自分ではなく、戦力(技術者)として信頼されるプレーヤーになりたい。3年間はただ「仕事ができる人になりたい」一心で、がむしゃらに取り組んでいきました。
そうして多様な現場を経験することで少しずつ自信がついてきました。「物を作り出すこの仕事が好きだ」と心から感じたのは、前述した4年目の仕事を経験した時。完成物をイメージしながら仕事をしていけるようになり、想像通りに施工できた時の大きな喜びを実感できたためです。最初の地道な3年間があったこと、そこで踏ん張る大切さも改めて痛感したのです。


現在担当している現場は都内の橋梁工事。流量確保の河川工事に伴う橋の架け替えで、難しさはそれが道路にかかっている橋だというところにあります。
河川の上流・下流側に2度にわたって迂回道路を作りながらの工事で、さらに交通量が非常に多いのに道は狭く、商業施設や病院、住居なども隣接しています。作業時間の制限や防音対策の徹底など、都市部ならではの厳しい条件の中、近隣に配慮した施工に取り組んでいます。
でもだからこそ技術者としてのスキルも磨けます。実は6年目から現場が変わるごとに新しいチャレンジの機会をいただき、例えば地域住民の方との交流でフロントに立つ他、発注者対応、警察等諸官庁対応など、毎回必ず新しい経験ができるよう所長に懇願。今回はついに「収支管理を任せて欲しい」と、所長の仕事そのものをやりたいと図太いお願いをしました。複数の現場でお世話になっている所長は私の性格をよくご存知。もちろんゴーサインをくださいました。


ベテラン技術者の領域に入ってきた今、会社からは現場を切り盛りする事だけではなく、若手技術者の育成にも期待されていると感じています。自ら仕事を見つけ学んでいくのが得意なタイプ、一生懸命やりたいのに何をしていいのかが見つけられないタイプ…。今私は、そんな若手それぞれの個性によって、育成スタイルを変えるやり方をトライしています。
そこで始めたのが「交換ノート」。1冊プレゼントし、明日やることを書き込む習慣をつけるようアドバイスしています。私がその後輩の技量をどこまで理解しているか知る目安にもなりますが、例えば3カ月後、1年後に本人がページを見返した時、「できる事が着実に増えてきたな」と実感できるものとなり、それがまた新たなモチベーションになると確信しています。
私の経験からも、仕事が本当に面白くなってくるのは3・4年目から。だから若手がまずそこまで頑張れる育成環境を大切にしたいし、私自身がそれをきちんと支えられるよい上司でありたいと思うのです。





